阿波藍のストーリーstory

手板法~ていたほう~

江戸時代後期から、阿波藍(蒅)の品質は全国の組屋から高い評価を集めていました。高価格ながら、染め上がりが優れていたことが理由のようです。
藍師の手にゆだねられていた蒅づくり。科学的な品質管理もなかったころ、どのように優劣を判別し、等級判定をしていたのか?
阿波藍独自の「手板法」という鑑定法の役割が大きかったようです。

手板紙 手板紙

手板法とは

手板法は、阿波藍の品質を決定する古来の鑑定法です。
その起源は明らかではありませんが、経験と勘に加えて、手板法による肉眼での鑑定が行われていました。
どのような手順で行われていたのかご紹介しましょう。

手順1

手板箱の前に座り、左手に阿波藍を取り、ヘラで数滴の水を加え、練り、阿波藍に水をなじませます。

手順2

右手の親指で阿波藍を十分に練り、両手で棒状に丸めます。

手順3

左の掌に少し水を入れ、右手でその棒状の阿波藍を立てて、掌で数回擦ると掌の水は、濃厚な藍液になります。

手順4

右手でこの藍液をヘラでよく練り、ヘラの先に液を集めて、ヘラを立てます。すると、その藍液はヘラに沿って流れ、その速度で藍液の粘度を確認します。

手順5

次に、掌にヘラの上の藍液を移します。棒状の阿波藍の先にその藍液を塗布し、その先端を手板箱の上に置いた和紙(手板紙)に押捺します。

手順6

この時、棒状の阿波監は形がつぶれ、その形が似ていることから「しいたけ」と呼ばれます。

手板法の信憑性

かつて藍商は、阿波藍を押捺した手板紙の色や艶、掌で感じた弾性や藍液の粘度等から阿波藍を鑑別し、優劣をつけ、価格に反映させたと言われています。
手板紙の押捺を見れば、明らかにその濃度に差があることが読み取れます。明治20年(1887年)1月29日の官報には、定量分析法のインジゴ含有量の順位が、手板法と一致したことが記載されていたそうです。

手板法の役割

徳島県藍商繁栄見立一覧表 徳島県藍商繁栄見立一覧表

明治29年発行の「徳島県藍商繁栄見立一覧表」には、426人の藍商の名前が記されています。
当時の藍商は複数の藍師と阿波藍の取引をしていたので、県内には相当数の藍師がいたことが想像できます。
藍師から阿波藍を購入し、全国の紺屋と取引する藍商は、阿波藍の品質を保持、向上させるため、手板法を用いて客観的評価をしていました。
藍師は納品前に手板法て検査し、指定された品質の阿波藍であることを証明していたようです。
現在、県内には藍商は存在せず、藍師も5軒となり生産量も少なくなりました。
そのため、手板法による判定は行われなくなりました。