阿波藍の色、4つの魅力
同じ藍色、紺色でも、どこか他の染とは違う。
唯一無二の魅力を持つ、阿波藍の「色」に冴(さえ)、滲(にじみ)、斑(むら)、褪(あせ)、4つのテーマからアプローチ。
さえ
冴
「冴えている」「澄んでいる」。
阿波藍の魅力を語る時、よく使われる言葉だ。
深い色なのに暗さがなく、むしろ明るい光が照らしているような不思議。
阿波藍だけが持つ、この謎を解くカギは成分にある。
藍色のもとになるインジゴは粒子が大きく、繊維の中まで浸透することがてきず、どんな繊維の芯も白いまま残ってしまう。
他の染料と比べて“浅く”しか染められないことが、かえって「冴え」という特徴を生んているのだ。
濃い色の藍染作品も、暗いというより華やかな印象があるのはこのためだ。
粒子サイズの制約がないからこそ生まれる独特の表情。阿波藍の「冴え」はまさに自然が生んだ美しさといえる。」はまさに自然が生んだ美しさといえる。
にじみ
滲
阿波藍染の代表的な手法のひとつ、絞り染め。
布の一部を系で固く縛り、藍甕に沈めた時に、染料が“つかない”部分をつくる。
染め分けられた藍と白(縛っていた部分)の間で、美しいグラデーションを描く部分が「滲み」だ。
阿波藍は濃淡をつなぐ滲みが特徴で、そこに独特の軽やかさデザイン表現の豊かさがある。
とはいえ、阿波藍を使えば誰でも美しい滲みを生み出せるかといえば、決してそうではない。
布選び(糸・織り方)、染師の技術、すべてが一体となって初めて、“作品”と呼ぶにふさわしい滲みを持った藍染が完成する。
水墨画にも似た味わいを持つ阿波藍の滲み、一期一会の絞り模様。オリエンタルな美を感じさせる伝統工芸品として、海外にも多くのファンが存在する。
あせ
褪
日焼けや洗濯を重ねると、どんな染料て染めた色も次第に薄くなっていく。
色あせが進んだ布、特に衣料品は役目を終えるイメージがあるが、藍の場合は違う。
その代表的な例がデニムだ。
インジゴ・ブルー、すなわち藍て染めたデニムは、色があせていく様子を「馴染んできた」とポジティブに評価。
中には使う前から水を何度もくぐらせ、色あせさせるマニアもいる。
阿波藍はもともと他の染料に比べて色むらが多いが、あせていく過程でも比較的むらが消えない。
色自体はそれほど薄くなる感じがないのは、藍色が繊維の芯まで浸透しない(他染料よりも染が浅い)という特徴から、色があせても新品との印象にギャップが少ないためと考えられる。
洗濯を重ねても凛とした美しさ、清々しさがそれなりに感じられる阿波藍。
長い歳月を共に過ごして、色あせの変化まで存分に楽しみたい。
むら
斑
色むらは染むらと言われることもあり、特に機械染の製品ではクレーム対象になる場合もある。
けれども阿波藍の世界では、その色むらこそがあたたかさを感じさせる大切な要素。
藍の粒子が小さければ小さいほど、繊維の中で均一に散らばり、仕上がりのむらは少なくなる。
けれども粒子が大きい阿波藍のインジゴは繊維の中でうまく散らず、どうしても多く集まるところ(しっかり染まる)と、行き渡らないところ(染めがあまい)ができてしまうようだ。
そこに生まれる曖昧なゆらぎのニュアンスは、均一性とはまた別の価値。
阿波藍の作品を見慣れてくると、藍色一色で仕上げたシンプルな無地の藍染にさえ、一枚ごとに風情の違いを感じることができるという。
手づくりのあたたかさに、オンリーワンの個性。初心者や藍染体験の作品にも、色むらの味わいは備わっている。